2024年 02月 27日
《春を待つ。Ⅴ・・・「草鞋」》
玄冬の夜なべ
炉端になげだした足の指に藁をかけ
幾つも幾つも編んだ草鞋。
春はすぐそこ。
(私は草鞋わらぢを愛する、
あの、枯れた藁わらで、
柔かにまた巧みに、作られた草鞋を。
あの草鞋を程よく兩足に穿はきしめて大地の上に立つと、
急に五軆の締まるのを感ずる。
身軆の重みをしつかりと地の上に感じ、
其處から發した筋肉の動きがまた實に快く四肢五軆に傳はつてゆくのを覺ゆる。
呼吸は安らかに、やがて手足は順序よく動き出す。
そして自分の身軆のために動かされた四邊あたりの空氣が、
いかにも心地よく自分の身軆に觸れて來る。